2018年凌空神勢門サマーキャンプレポート
今年も米国ソノマ山中にて凌空神勢門の夏合宿が開催され、徐谷鳴老師の指導を受けようと北米各地から学生が集結。我々も日本から参加しました。
徐老師は学習段階を小学/中高/大学の三つに分けており(徐老師は欧米人にもわかりやすいたとえを使うことが多いのです)、合宿では順を追って、基本功を通じて身体と意識の使い方を学んでいきました。
なお、各段階ではそれぞれ「四が一になる」「一が二になる」「二が三になる」ことを修得します。たとえば「四が一になる」とは、両手両足(四)を消して中定(一)に収斂することを意味します。
一般的に武術や格闘技では敵を手足で打つ等して倒すことを狙いますが、当門では敵に我が察知されることを忌み嫌います。このためたとえば腕は敵に接触した際、敵の腕とともに我が胴体に吸引し、化して、存在を隠します。代わりに中定を用いて敵の中心を攻めるのです。中定とは身体の中心を頭から尾まで縦に走り、上下に伸縮するものです。真っ直ぐに立った人間の頭を真下に押し下げようとしても難しい。それは中定が作用しているためです。敵が腕に接触してきても、腕ではなくこの中定を感じさせるようにします。これが「四が一になる」ということです。
この一になった身体を内形・外形の二つに分離し内形で攻撃するのが「一が二になる」、さらに勢を分離し勢で攻撃するのが「二が三になる」状態です。
合宿ではこれらの感覚を得るための基本功と、正しく力が使えているか二人組でのチェックが繰り返されました。
基本功について言うと、以前は、心意、太極、八卦、攔手、通背等の動作をそのまま使うことが多かったのですが、2016年に徐老師が凌空神勢門を設立してからは、より単純な動きに変化してきたように思います。武術の動作には当然テクニックが含まれていますが、身体の感覚をつかもうという時にテクニックにまで気をまわすのは難易度を上げるので、削ぎ落としたのではないかと推測しています。
また、一般的に中国武術は一つの動作で、打撃・関節技・投げ技・蹴り技等に応用できると言われています。それは動作の抽象度が高いからでしょう。一つ一つの技の精度を上げるより、力の出し方に訓練の重点が置かれているのです。これを突き詰めていくと、特定の門派に限定されることのない、普遍的な力の出し方にたどり着く、と容易に想像できると思います。(さらには、武術だけではなく、各種格闘技やスポーツ等にも応用可能です。)
合宿参加者の多くが「一年間の進歩を見せたい」と思ってやって来るわけですが、いざ二人組でチェックを行うと思うようにいかず、徐老師に課題を指摘されて、がっかりしたり、うれしかったり。五泊六日の訓練はあっという間に終わり、今は老師に再会する来年一月の東京講習会までにレベルアップできるよう鍛錬を続ける日々です。